[ガッチャマン クラウズ] 自分の正義を信じて頑張りすぎた結果、崩壊していく少女

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「ガッチャマン クラウズ」がおもしろすぎて、1期から2期の8話まで舐めるように観ちゃいました。久しぶりにこんなに考えさせられたし、心を動かされました。いろいろと語りたいことはあるんですが、社会学的な見地では結構語られてるので、今日は「インサイト」から登場したもう1人の主人公である三栖立つばさに焦点を当てていこうと思います。

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正義感の強い少女

三栖立つばさは2期に入ってガッチャマンの新しいメンバーとして登場した女子高校生です。新潟の片田舎で育った彼女は、JJにガッチャマンにさせられ、突然現れたゲルサドラ(人の感情を具現化できる宇宙人)と仲良くなり、東京に移り住み、いっきに今までの日常から非日常のような世界に迷い込みます。

しかも、ガッチャマンとして世間から注目され、テレビにも何度も出演して、さらにはゲルサドラを日本の総理大臣にするために協力して、最終的には実現してしまいます。これまで田園地帯で育ってきた彼女からしたら、すべての体験が目新しく映り、感覚が急激にアップデートされ、自分という存在が世界でいちばん輝いて見えたことでしょう。

ここまで自分の信じた道がうまくいきすぎると勘違いの1つや2つはしてしまうだろうし、他人からなんと言われようと自分の方が正しいと考えてしまう、そんな彼女の気持ちもわかります。なので、ゲルサドラの体が変形し、いきなりくうさまという謎の存在が現れて、明らかに異変が起きてるのに、そんな現実を見ようともせず、自分とゲルサドラの目標である「みんなの心を1つにする」を叶えようとひたすら猛進します。

それと、もうひとつ。三栖立つばさは、根本的に正義感が強く、周りの人よりも頑張りすぎる少女です。こう説明すると、「魔法少女まどか☆マギカ」の美樹さやかを思い出す人もいるはずです。そもそも、この作品に出てくる「NOTE 」というガッチャマンに与えられるノートは、ガッチャマンとして選ばれた人間の心臓部分を具現化したもので、ソウルジェムとほぼ同じ原理です。彼女のキャラを考えた人が美樹さやかをイメージして作った可能性も十分にありそうですね。

ということは、ある意味三栖立つばさは美樹さやかでもあると言えます。2人とも正義感が異常に強くて、自分の本当の気持ちさえも押しつぶして、思考停止状態で自分自身が壊れるまで突き進みます。誰かが助けを求めようとしても、必要ないと言い張り、エントロピーを増大させまくります。

少女の妄想の行き着く先

一方、この作品の主人公である一ノ瀬はじめは三栖立つばさとは真逆です。まず、ちゃんと頭で考えます。敵と向き合います。これまでガッチャマンが敵として処理してきたMESS(メス)を仲間に取り入れたり、1期の最大の敵であるベルク・カッツェですら、自分と融合させて、そのあともカッツェの意志は残したままです。

「ガッチャマン クラウズ」がおもしろいのは、いろんな社会的な問題を扱ってたり、前衛的なアニメーションを魅せてくれることもそうなんですが、これまでとは違うヒーロー像の提示と典型的なヒーローの否定なんですよね。

いわゆるヒーローは、特別な力や武力で敵を倒してきたわけですが、それは一種の弾圧のようなものです。力でねじ伏せるわけです。「ダークナイト」でジョーカーがバットマンにこんなことを言います。

Don’t talk like one of them – you’re not, even if you’d like to be. To them you’re a freak like me…

あっち側にいるつもりで物を言うなよ!アンタは違うだろ!たとえそうありたいと思っていたとしてもだ。やつらから見ればアンタもオイラも同じ異常者だぜ…

つまり、ヒーローも普通の人から見たら異常者で、ただ自分たちを守ってくれる存在かそうじゃない存在か、ここだけ違うくらいだと言うんですね。これはとっても深くて、もっと極端に言うと、いくら正義のために頑張っても、人々がバットマンを必要ないと考えたら、彼はただの脅威になる可能性もあると。

ヒーローは悪は敵とし、敵は悪とし、排除の対象として扱います。平和運動が最優先事項であり、それを行う自分が絶対的な正義と勝手に考えてます。「ガッチャマン クラウズ」では、そんなヒーローが三栖立つばさで、「そうじゃないよね」と言ってる、新たなヒーローが一ノ瀬はじめなわけです。

三栖立つばさは、田舎で暮らしてきて、世間の荒波という洗礼を受けないまま、ガッチャマンになり、総理大臣の秘書的な存在になりました。そこで信頼できるのは、ガッチャマンとしての浅い経験でも、一ノ瀬はじめの言葉でもなく、ゲルサドラの理想であり、田舎での生活から培われた彼女の妄想です。

みんながひとつになれる。みんなが幸せになれる。

それに疑問を呈する一ノ瀬はじめのような人たちはただの邪魔者。ヒーローが敵の言葉を聞いてこなかったように、三栖立つばさは敵はもちろん、彼女のことを思って話しかけてくる仲間、ひとつになりたくない一般の人たちの声まで無視します。

彼女の妄想の中の正義。流れ的には絶望に変わるんでしょう。それから美樹さやかと同じように最終的には救われるのかもしれません。どちらにせよ、正義という名で行った自分の行為に、どう落とし前をつけるのか楽しみですね。

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