子供が読んでも大人が読んでも楽しめる小説「探偵伯爵と僕」ー 森博嗣

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ここのところマンガばかり読んでいて、ちゃんとした文字に触れてなかったので、本屋さんに行くことにしました。そこでふと目に入った森博嗣(もりひろし)さんの「探偵伯爵と僕」という小説。

272ページという短さは、久しぶりに小説を読むには理想の長さ。それも森さんが書いてるから、信頼もできる。あらすじも読まずに、「これにしよう」と本屋さんに入って5分も経たないうちに即決。

それから馴染みのイタリアンのカウンター席に座り、キャンティを飲みながらゆっくりと時間をかけて読み進めました。やはりなにか後押しがないと、久しぶりの文字の羅列は辛いものがあります。

「少し薄暗いカウンター席で、イタリアンワインを飲みながら森博嗣の小説を読んでるおれ」みたいなナルシズムに浸るくらいがちょうどいい。

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探偵伯爵と僕の感想(ネタバレあり)

そんな感じで読み始めると、あれ、想像してたのとかなりちがう。

新太くんというませた子供が主人公。ある日、その彼が小学校の近くの公園で伯爵と名乗る、髭を生やしたいかにも怪しそうなおじさんと出会うところから始まります。どうやらこの人は探偵らしい。

物語の前半は、公園でこの2人がちょっとしたやり取りをしてるところを、読者はただただ眺めてるだけ。このまま終わっていくのか、と考えたら少し拍子抜けしてしまいました。

しかし、中盤にかけて物語は急変します。新太くんとまあまあ仲の良かった友達が行方不明になり、そこから新太くんと伯爵もこの事件にどんどん深く入り込んでいきます。

これまでのほのぼのとした日常が、いっきに非日常の日々になり、読んでるこちらもどきっとします。また語り手が子供というところが拍車をかけます。

小学生の子供が主人公という時点で、大きな事件はなく、小さな事件と共に淡々と進んでいくのかと思わされてました。なので、どきっとしました。

その数日後、また他の子供も行方不明になります。解説のところで、アンガールズの田中さんが「子供向けから大人向けになる」と書いてますが、まさにその通り。

最初の入りがあまりにも子供向けな感じだったので、読んでる側は油断するんですね。人間のバイアスをうまく利用した構成。

それはもうおもしろいですよ。だって、読む前は期待値が多少なりともあって、そこから下がるわけです。かと思わされてたら、ぐいぐい上がっていくんですから。ずるいですよ、ほんと。

もう1度言います。語り手は子供です。ここはすごく重要ですよ。

伯爵でも他の大人でもなく、子供なんです。ませてはいますが、まだまだ経験の少ない子供が、大きな、悲惨な事件に巻き込まれていくんです。

子供が語ってるので、ちょくちょく大人に対する意見も出てきます。

大人はどこか子供を子供扱いしてるところがあるじゃないですか。自分たちのそういう発言や行動を深く考えることなんてあまりありませんが、子供はいろいろ考えてる、もしくは考えてるかもしれないんですよね。

そういうことを読みながら改めて子供に対する自分の態度について考えさせられました。そういえば、ぼくも小さい頃は大人から子供扱いされるのが嫌いで仕方なかったような気がします。また命令形で言われるのが嫌でした。

もう少し大人はそういうところを考えるべきなのかもしれませんね。自分たちが思ってるよりも、子供はずっといろんなことを考え、吸収してるわけですから。

話は少し逸れましたが、久しぶりに満足のいく読後感を味わえました。お話のテンポもすごくよかった。この機会に、森さんの本をいっきに読んでしまおうかしら。この人の論理的で数学的で工学的な文章、読めば読むほどしっくりくるんですよね。

ということで、今回は「子供が読んでも大人が読んでも楽しめる小説『探偵伯爵と僕』ー 森博嗣」でした。

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